Q & A about journal publishing 延長戦

 

印南 洋 先生が,全国英語教育学会で Orega 先生
Journal publishing seminar 終了後に個別質問した内容を
転載許可いただきましたのでアップします。

 

(Q1) 研究業績書に under submission や under review の論文を書いて良いか?

投稿中の論文を
Yamada, T. (under submissionもしくはunder review). Title…
Journal name… のように研究業績書に書いている人がいるのですが,
google searchすれば著者がすぐに分かってしまい、blind reviewにならないのでは?

A1. その通りだが、そこまで著者に制限はできないが、研究業績書には
書かないで欲しい。

 

(Q2) 査読者のコメントをcut and pasteして自分の論文内で使うと
plagiarismになりますか?

A2. いい質問。なるだろう。cut and paste するのは良いが、
その後たくさん revise するうちに形跡がなくなると思う。
まさに的確な表現のため cut and paste して使いたいのであれば、
As reviewer 1 says, “…” のように引用すべき。査読者も喜ぶ。

 

(Q3) journal editorになるにはどうすればいいですか?

A3: たくさんの論文をreviewするうちに、このreviewerはジャーナルに
とって重要な人だとeditorが思うはず。
editorial boardに入れてもらえないか丁寧にリクエストしてみる。

 

t値と自由度から計算する効果量rはηと同じもの

 

外国語教育研究ハンドブック水本・竹内(2008)では,

検定のときの効果量として,r を紹介しています。

平均や標準偏差から計算する効果量の d は,指標として

わかりやすいものですが,検定から得られる 値と自由度(df)を

使って計算する効果量の r は,一体何を示しているのか,

わかりづらいといえば確かにそうだと思います。

 

大学院の授業でも毎年,学生が混乱しているようですし,

海外のジャーナルに論文を投稿して,査読者から

「この効果量の という指標は見たことがない」というコメントを

もらったという方もいましたので,説明をここにまとめておきます。

 

水本・竹内(2008, p. 61)を確認してみるとわかるように,

効果量の r は η (イータ)と同じものです。

ちなみに,t 検定の効果量として説明した r は相関比の

特殊な形であるため,η2 は,分散説明率と呼ばれる

相関係数(r)を 2 乗した r2 やR2 (回帰分析の決定係数,

coefficient of determination)と同じものであると

考えてよい (Field, 2005, p.357)。

 

そのため,論文には η と書いても構いません。

 

事実,Hatch and Lazaraton(1991) では,検定の効果量は,

r と同じように 値と自由度で計算していますが,

η として紹介されています。

Hatch, E., & Lazaraton, A. (1991). The research manual: Design and statistics for applied linguistics. Boston: Heinle & Heinle.

 

効果量の r は η は同じものだと言われても,

なぜ同じなのかわからないと思いますので,

ここでは,外国語教育研究ハンドブック第5章で使われている,

独立した(対応のない)検定のデータを使用して確認します。

 

R をお使いの方は,特別なパッケージは使わずに実行しますので,

コピーアンドペーストして試してみて下さい。

 

まず,データを読み込んで,検定を実行します。

dat <- read.csv(“http://mizumot.com/handbook/wp-content/uploads/ch05independent.csv”, header=T, fileEncoding=”CP932″)

dat # どのようなデータか確認

# 等分散を仮定した t 検定

t.test(dat$Score~dat$Group, var.equal=TRUE)

 

 

次に, 値と自由度から,効果量 r を計算します。

少し長いコードですが,上記の結果から手計算でも

構いませんし,Excelの計算シートを使ってもよいでしょう。

t検定の効果量算出についてはこちらを参照

t.result <- t.test(dat$Score~dat$Group, var.equal=TRUE)

r <- sqrt(t.result$statistic[[1]]^2/(t.result$statistic[[1]]^2+t.result$parameter[[1]]))

r

 

 

同じデータを使って一元配置の分散分析を行い,

効果量の η2 を計算します。

検定でも分散分析でも得られる p 値は同じになります)

anova(lm(dat$Score~dat$Group))

result <- anova(lm(dat$Score~dat$Group))

eta.squared <- result$”Sum Sq”[1]/(result$”Sum Sq”[1]+result$”Sum Sq”[2])

eta.squared #イータ2乗

 

 

上記の結果から得られる η2 はイータを2乗したものなので,

も同じように2乗して比較してみます。

r^2  # 値と自由度から計算した効果量 を2乗したもの

eta.squared #イータ2乗

 

 

同じ値になっていることが確認できます。

また,確認のために ηの2乗を外して r と比較します。

r # 値と自由度から計算する効果量 r

sqrt(eta.squared) # 2乗を外したイータ

 

 

こちらも同じ値になっています。

このように,r は η と同じものであることがわかります。

 

なぜ違う計算から得られる,r と η が同じ値になるのでしょうか。

 

値と自由度から計算できる,効果量 r は点双列相関係数

(point-biserial correlation coefficient) と同じものです。

 

点双列相関とは,以下の図のように,2つのグループを

示す値(1と2)と得点との相関係数のことです。

(グループを示す値は名義尺度なので,1と2でなくても,

2と3だったとしても同じです。)

 

 

上記までのデータで,Rを使って計算してみます。

pb.r <- cor(dat$Score, dat$Group)

pb.r

 

 

効果量では,正負の符号は関係ありません。

上で計算した,r と η と同じ値になっています。

 

また,t 値と自由度で計算した効果量rの2乗と,

点双列相関を2乗した値と,分散分析の結果から

計算される ηの3つを比べてみましょう。

r^2

eta.squared

pb.r^2 #を2乗したもの

 

 

同じ値になっていることがわかります。

 

点双列相関をグラフにしてみます。

attach(dat)

plot(Score~Group, ylim=c(0,100), xaxp =c(1, 2, 1), yaxp =c(0, 100, 10))

abline(lm(Score~Group), col=”red”)

 

 

グループ1と2の点数に差があれば,回帰直線の傾きも

急になる(つまり,r の値が大きくなる)はずですが,

差がないために,r の値が非常に小さくなっています。

 

参考までに,r = 0.1(効果量小),r = 0.3(効果量中),

r = 0.5(効果量大)の場合の2つのグループの差を図示します。

(効果量 d も一応入れています)

 

 

このように,どちらのグループに振り分けられたかに

よって,点数に差が生じるかどうかというのは,

分散分析における効果量の計算式

η2 = グループ間の平方和 / 平方和の合計

で確認している,「群の効果によるばらつき」

(グループの違いによって生じるばらつき)の割合と

同じものをみているといえるわけです。

 

結論:効果量の r と η は同じものである。

 

 

統計解析ソフトR入門者向けワークショップ

 

※このWSは終了しました。当日は20名以上の方が参加されました。
ご参加いただいた皆様,どうもありがとうございました。 

  • 日時:7月14日(土)15:00-17:30
  • 場所:関西大学岩崎記念館 2階 CALL-1教室
  • 対象:
    ・ 学部生,院生,研究者
    ・ R を触ったことが無い人
    ・ R を使ってみたいと思っている人
    ・ これからデータ分析をする人
    ・ S●SS は自宅で使えないので不便だと思っている人
  • 参加費:無料
  • 内容・その他:
    – 『外国語教育研究ハンドブック』(松柏社)の内容に沿って説明します。
    – Rのインストールから行う超初心者向けワークショップです。
    – ハンズ・オン,少人数で行います。
    – 参加者多数の場合はお断りする可能性があります。ご了承下さい。
    – ご自分の PC を使いたい場合はご持参下さい。
    – 持込PC用インターネット接続サービスはありません。

 

研究用ブログです。

 

2010年4月に関西大学外国語学部・大学院外国語教育学研究科に着任しました。
「忙しいなー」と思って毎日過ごし,気づいたら2年が過ぎていました(汗)

最近,研究のペースが落ちてきたように思いますので,
もう少しペースを上げていきたいと思います。


2010年4月入学式(研究室から)